宿泊者と地域をつなぐ西陣織を使用した装飾パネルを製作

川島織物セルコン × 春夏秋雪 京乃宿 ギオン福住

2025年度モノ
祇園の入口に佇む京料理旅館、ギオン福住。着物の帯など高級織物を手掛ける川島織物セルコンと製作したファブリックパネルや額装パネルは、宿泊客との深いタッチポイントを創出しています。

川島織物セルコン
身装営業本部(2024年度時点)
若山 華奈子 様

なぜ宿泊施設に対して貴社商品を提案したいと思われたのでしょうか。

当社の呉服部門が手掛ける織物は、帯が中心だったため、販売先が着物を着用する方に限定される傾向がありました。そこで和の織物を使った新商品で、より多くの方々に織物の魅力を届ける新たな機会として、商談会への出展を決めました。特に宿泊施設は「手軽にできる装飾で京都らしさを表現したい」というニーズに合うだけでなく、宿泊客との接点も生まれる点に可能性を感じました。

ギオン福住さんとの取り組みは、どのように始まったのでしょうか。

商談会でファブリックパネルを提案していたところ、ギオン福住さんでもフロントカウンターへの導入を具体的に検討されており、非常にスムーズに話が進みました。その後の訪問を通じて、他の課題やニーズも把握し、スピード感を持ってご提案したことで、額装パネルや生地提供など、複数の案件へと発展しました。

今回の提案で良かった点やこだわった点は何でしょうか。

今回ご提案した美術工芸織物である重宝裂(ちょうほうぎれ)は伝統的な文様と配色が特徴です。旅館空間との相性が良く、今回も施設の雰囲気に自然に溶け込む提案ができたと思います。またファブリックパネルは比較的短納期で、大掛かりな施工も不要なため、営業への影響を抑えながら空間をグレードアップできた点も喜ばれました。 今回の額装パネルは、京都の名所を描いた浮世絵をポリエステルの生地に昇華転写し、額マット部分に絹生地の重宝裂で装飾することで作品のストーリー性を高めました。また、ギオン福住さんからのご要望で日英併記の解説POPや、その名所へのマップの二次元コードも付けることで、宿泊客の地域回遊を促す工夫をしました。単なる装飾としてではなく、織物を通じて旅の質を高める作品に仕上がり、まさに宿泊施設との協業で織物の可能性を広げる機会になったと考えています。

春夏秋雪京乃宿ギオン福住
館主
山田 周蔵 様

地域の商品を取り入れようと思ったきっかけは何でしょうか。

コロナ禍をきっかけに旅館の役割を改めて見つめ直しました。単に宿泊する場所ではなく、京都の歴史や奥深さ、魅力など地域の大切なものを伝え、地域の回遊を促す「橋渡しの場」だと再定義しました。 そのため、館内に取り入れるものは意味やストーリーを持たせ、説明できるものにこだわっています。宿泊客との深いコミュニケーションを生む「タッチポイント」として機能させたいという想いがあります。

川島織物セルコンさんの商品はいかがでしたか。

フロントカウンターと大広間の壁面のファブリックパネル、客室20室の床の間に掲げる額装パネルを依頼し、特に印象的だったのは、知恩院を一望できる特別室に飾った額装パネルです。 知恩院本堂(御影堂)を描いた浮世絵を用いて、現在の景色と比較して楽しめるようにし、客室係がお客様に説明するタッチポイントを創出すると共に、お客様が実際にそこへ足を運んでみたくなるようなきっかけ作りになることを期待しています。 客室で京都の歴史と伝統工芸の両方に触れられ、その後街に出ていく流れを生み出す、理想的な作品に仕上がりました。

今後のビジョンや人・地域との関わりについて教えてください。

旅館はお客様とのコミュニケーションが特に重要で、例えば客室係には「お食事を出すことが客室係の仕事ではなく、お客様とのコミュニケーションの中で、シーンとしてお食事がある」と伝えています。 一方、経営側としても「後は頼んだ」ではなく、客室係やフロントがお客様とコミュニケーションを取るためのタッチポイントをどうやって作るか、日々考えています。 今回の川島セルコンさんとの客室等での取組に続き、次は、お食事の際に使用する紙のテーブルシートに京友禅の図案を取り入れる等、お食事のシーンでの取組を検討しています。 このような取組を通じて、お客様に自然な形で伝統工芸や文化に触れていただき、そこから工房見学や商品購入といった次の行動につながれば嬉しいです。 当館だけで完結するのではなく、まずは地域としっかり本腰を入れてつながり、そして宿泊客とのコミュニケーションを深めて地域への回遊を促進し、京都にいっそう魅力を感じてもらうことでリピートにつなげ、京都の観光産業に貢献していきたいと考えています。

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